2019年11月13日水曜日

著者自身のアマゾンレビューを転載

本書の骨格としている「陰陽」という言葉には、スピリチュアル的で怪しげなイメージがつきまといます。しかし、本書における位置付けは「対立するもの同士を融和して、新しく強固なものを作りあげる」という比較的シンプルで実利的な考え方です。

この実利的な「陰陽」は、「陰陽五行」という形式で中国から輸入されるはるか以前から、日本では当たり前のように存在した比較的プリミティブな概念だったのではないかと想像しています。 東西、上下、内外、動静、喜怒、火水、日月、光闇、男女、敵味方、生死などは、一見対立するように見えて、実は根本でつながっている「二本でひとつ」の存在です。この世は複雑にできているように見えますが、基本的な構造は全て「二本でひとつ」。とてもシンプルです。そしてそれこそが科学の原初的な姿だったのです。

この柔軟なアイデアは、特に古代日本で対立する民族、対立する宗教を融和していくのに絶大な威力を発揮したことでしょう。シンプルが故に比較的マクロレベルにも拡張し易いのです。現代の日本にも脈々と流れています。何と何が二本セットなんだろうって、想像を膨らましていくと社会の成り立ちがみえてきます。

本書は、地図を拠り所にした推理モノの体をしていますが、底流には思想書としての骨格が見え隠れするように工夫してあります。そういった隠れキャラも含めて本書の「ロマン」を楽しんでくださいませ。